故伊邪那岐尊御佩の十拳劍をして、後手に揮つ逃来まして、遂に筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に戻祓し玉ふ時に、衣冠帶褌枕悉く投棄玉へれもど、剣を楽玉ひし事は曾て見へざりき。
如此れは劍のみ不浄を拂ひて穢れざる事は言も更にて味矩高彦根神の御佩の十掬剣をもて、天雅彦が喪屋を切伏せ玉ひし事、はた大祓の用物に刀子を出せる事も皆故ある事ぞかし。猶いわば、素戔嗚尊に、千座置戸(ちくらのおきど)の解除(はらえ)を科せ亦切鬚とぶる切物を刀剣の類ならん事は、既に常夜行時に天目一箇神をして雑刀など作らしめ玉えること古語拾遺に錄せるが如く神代より刀の種々具りし事亦合わせ考えるべし
又素戔嗚尊は十握剣を以て、八岐大蛇を平げ玉ふのみならず、霊剣をさへ玉ひて之を天照大神に献り。
元資料:刀剣の歴史